BLOG
さて。バラしてみっか!

スズキ SV650S エンジン治療編 4/7

SV650Sエンジン_ピストンサイドの傷
初見アイコン
ハツミモータースロゴ
埼玉県久喜市の2輪中古買取販売《ハツミモータース》がお送りする、仕事だけではない、2スト大好きおじさんのブログ
『さて。ばらしてみっか!』です。
※マシンの販売だけでなく、カウリング補修/ブラスト処理も承ります。

前回までのあらすじ

腰上のバラしはスムーズに完了、腰下へのバラしへ。
腰下バラしの最初の壁、マグネトーロータ外しの工程において、
専用工具が必要な事が判明

しかし、その専用工具は海外にしか売っておらず、
その価格 4万円!

魂が抜けた男性(イラスト)

無ければ作る!

マグネトーロータを外す為、専用工具を発注した場合、発注から到着までの時間待たなければならないという事と費用の問題を加味し、手持ちの材料(L字アングル)で自作ることにしました。
本来は専用工具を使うべきなのでしょうが・・・。

費用というお金の問題もありますが、時間も惜しいので。
正にタイムイズマネーです。

各部の寸法を測り、

寸法の図面

切断し溶接です。

溶接している人(イラスト)

傷付かないようにエッジを取り

ヤスリ(イラスト)

完成!

自家製工具完成
シャキーン!

矢印の部分にこの作った工具を使ってマグネトーロータを外します。

SV650Sエンジン_マグネトーロータ_名称付き

マグネトーロータ外れる

強度がちょっと心配でしたが・・・無事外れました。

フライホイル(左側)も外しちゃいます。

外したマグネトーロータ

ですが案の定、作業一回で作った治具に歪みが出たので、勿体ないけど廃却です。
L字アングルだと強度不足でした。

これ以降は肉薄のスパナでも代用が効くことが分かったのでそちらを使用しますが・・・

この後はピストンを取り外し、カムチェーンやガイド等を外して行くことになります。

SV650Sエンジン_分解中_名称付き

感じた違和感

下の写真のように各部品を外しながら傷やアタリ、動き。同時に聴診器を使用し、音のチェックを行ってきたのですが、ここである違和感が・・・

聴診器をあてている初見さん

私の足先が異様に長いのです!

足が長くなったように見える靴下とクロックス

・・・っていうのは、防寒靴下にスリッパを履いているからです。
作業場がコンクリートのブチっぱなしなんでホント寒いんですよ・・・
それに私のシリンダーヘッド混合毛(こんごうけ)が薄い・・・ホント歳とったなぁ・・・

薄い混合毛のイラストを合成した初見さん

・・・って、そういう違和感ではなく!!

コンロッドの動きを確認していたら、
『カコン!!』っと小さな音が。

竹の共鳴で鳴る ししおどし と同じような音質の音がクランクケースから聞こえました。

鹿威し(イラスト)

コンロッドの左右のクリアランスは感触的に問題なさそうですが、
フロント側のコンロッドには上下にわずかな動きがあります・・・
『これ絶対まずい音と動き。間違いなくメタルだ~!(泣)』

クランクシャフトとコンロッドの接点にある金属パーツ

涙を流す男性(イラスト)

『神様お願い!クランク自体にダメージが無ければそれで良いです!!』

祈る男性(イラスト)

聴診器をクランクケース各部に当ててエンジン始動時に確認できていた音、部位、聞こえ方、を確認します。そして回転に同調する場所・・・

条件がものの見事に一致します。

ここに原因が有るのであれば、圧縮の異常?っと思った点にも納得がいきます!

『十中八九間違いない!』と仮説が確信に変化していきます。

『神様お願いだからメタルだけにして、クランクだけは無傷でいさせてください!!』

っと再度お願いします。

祈る男性(イラスト)

クランクケースのバラし

これで2個目の異常要因を発見しましたが、とにかくクランクケースを割らないと確認ができないので、バラしを進めることに。

残っている部品を取り外し、やっとクランクケースを開くことができました。

SV650Sエンジン_分解中_名称付き

やっぱりあった!

内部を洗浄しながら、内部の確認を進めていきます。

すると、(「スズキ SV650S エンジン治療編 1」の時に出てきた)割れていたクラッチプレートのダンパーが全て出てきました。

エンジから出てきたクラッチのダンパー

同一形状で4個そろったので、ここはクリアです。やっぱりあった!!

エンジン始動時に確認ができた、細かい何かが当たるような音質のものはこいつで間違いないでしょう。

新品のクラッチ(写真右側)には4個きっちりダンパーが付いています。

クラッチとクラッチダンパー

クランク及びコンロッドメタルの確認

そして問題のクランク及びコンロッドメタルの確認です。

下の写真で赤枠で囲った部分がクランクになります。

この写真でもわかるように左側(フロント側、黄色枠で囲った部分)が摩耗している(細かい傷(ヘアライン)がついている)のがわかります。

SV650Sエンジン_クランクシャフトとコンロッド_名称付き

本来はマイクロゲージを使用しますが、ここは一旦まずはノギスを使って計測します。

マイクロゲージ
マイクロゲージ

すると、下記のような数値になりました。

  • フロント側 上:1.16mm
  • フロント側 下:1.22mm
  • リア側 上:1.52mm
  • リア側 下:1.46mm
寸法の表

メタルのみでの左右差 0.6mm は致命的です。

ノギスで計測中
フロント側 上
ノギスで計測中
フロント側 下
ノギスで計測中
リア側 上
ノギスで計測中
リア側 下
焼き付き摩耗してしまったクランクシャフト
SV650Sエンジン_クランクシャフトの摩耗部
クランクシャフトの径計測
クランクシャフトフロント側外寸
クランクシャフトの径計測
クランクシャフトリア側外寸
  • クランクシャフトフロント側 外寸:37.82mm
  • クランクシャフトリア側 外寸:38.09mm

さらに、クランクシャフト自体が摩耗段差を起こしているので再生は不能です・・・(泣)

通常は10万kmほどの耐久性はあるのですが、使用状況によっては1~3万km未満でも起こりえる事象です。

聴診器で聞こえたもう1種類の音。
ガタガタ音はコンロッドメタルとクランクシャフト摩耗によるものだったのです。

メタルだけで・・・と願っていましたが、大変残念な結果となり、私も一瞬呆けました・・・

燃え尽きた男性(イラスト)

ピストンとシリンダーは大丈夫!

とは言え、不幸中の幸い。シリンダー内部、ピストンに大きな傷はなく安堵しました。

フロント側のピストンスカート部に首を振ったときに出来たと思われる微小な傷があるくらいです。
これは磨きで取れるレベルです。
シリンダー内には傷はありませんでした。

コンロッドメタル等のクリアランスに異常をきたすとピストンが振られ真っすぐにストロークせずピストンがシリンダー内壁に接触する現象です。

SV650Sエンジン_ピストンサイドの傷

よかった。エンジンをすぐ停止しといて・・・

ホッと胸をなで下ろす男性(イラスト)

しかし、ここは単なる通過点、確認事項はまだ残っています。

さて、どうしたもんかね・・・。

どうしたもんかね「つづく」

ご報告

筑波サーキットを走るHさん
ゆきさん撮影によるレース当日のカッコいい写真!※ゆきさんについては下記参照

3/9(土)に開催された2024年 筑波ロードレース選手権 第1戦
TC400(TC400とTC250の混走)クラス 登録20台、出走19台において無事完走11位に入ることができました。
これも皆様のご協力、応援の賜物と思っております。
この場にてお礼申し上げます。

この筑波ロードレース選手権 第1戦の詳細については、後ほど、ブログにてご報告させていただきます。

今回のブログの最後を飾ったHさん(ゼッケン12)の写真は(Xアカウント)ゆきさん撮影によるもの。
当ブログへの掲載を快諾してくださいました。
カッコいいバイクの写真を沢山投稿されているので、是非ご覧下さい

また、筑波サーキット公式YouTubeには動画がアップされていますので、こちらもどうぞ。